JR東日本の駅名標概説

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※このページではJR東日本のプラットホームに設置してある電照式(内照式・行灯式)駅名標について、制作された年代によるデザインの変化とその特徴を簡潔に記述してあります。

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※当ページにおける駅名標の分類は個人的なもので、公式のそれに依るものでは無いのをご了承下さい。
※駅名の前にが付いているものは、その駅名標が現在使用されていないことを表します。
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デザインによる駅名標の大別


※画像をクリックすると拡大します。
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1. 国鉄型(すみ丸角ゴシック時代)


 “全国の駅名標の画一的基準”

上野駅2番線〈山手線〉 (東京都台東区上野)
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 かつて国鉄の駅ならば多くの駅で見ることができたすみ丸角ゴシック体(通称:スミ丸ゴシック)を使用した駅名標。以前に楷書体や丸ゴシック体など様々な書体による駅名標が乱立したため、1960年にスミ丸ゴシックの文字見本を制定した上で統一を図った。しかし実際は手書きで書かれる性格ゆえに駅名標を制作した会社(駅名標文字を担当していた人物)によって文字の字形が大きく異なっていた。そのうち新陽社の下請けで文字をデザインしていた佐野氏が書いたものは、書体は読みやすさと美しさを兼ね備えた書体としてもっとも評価が高く、現在のJR東海の駅名標のひらがな部分に制式採用されている。
 なお国鉄解体前後には写真植字の書体であるゴナを使用したものが、ごく一部流通した。


2. JNR-Lを使用したもの


 “国鉄とJR、二世代で生きる書体”

仙台駅13番線〈東北新幹線〉 (宮城県仙台市青葉区)
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 国鉄は民営化される5年前の1982年に、次世代の国鉄サインのスタンダードフォントを制作すべくタイプバンクに依頼し、国鉄サイン専用書体「JNR-L」を開発した。これは東北・上越新幹線開業の際に設置される各種サインに使用された他、国鉄末期に駅舎を建て替えたり改修したりした一部在来線の駅にも導入された。JR東日本発足後は使用されなくなったが、漢字部分とアルファベット部分がJR東海の駅名標に受け継がれて現在でも活躍している。

◆個別の作例を含む詳しい内容はJNR-Lを使用した駅名標を見よ。


3. ひらがな主体時代


 “JR東日本の船出を飾る緑のライン”

新木場駅〈京葉線〉(東京都江東区新木場)
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 JR東日本発足直後に制作されたタイプ。国鉄の名残を受けて当駅名をひらがなで大きく書いているタイプ。しかしJR東日本のコーポレートカラーである緑の帯を中央に配すことにより国鉄色からの脱却を図っている。表示内容も大きく変わり、それまで全て大文字だったローマ字表記は小文字混じりに変わり、またこれ以降駅所在地が表記されなくなった。書体はゴナのベースにした書体。おそらくカッティングマシンに由来する書体であろうとされている。ひらがなの「た」や「が」の骨格や、漢字・カナ部分の折れの部分が斜めにカットされているなどの違いが見られる。後に新ゴを用いた作例がごく僅か作られた。
 このタイプは2016年のナンバリングの導入で首都圏では急激に姿を消しつつある。また地方でも4ヶ国語を表記を採用したLED式に順次置き換えているため、遠からず絶滅危惧種となるであろう。

◆個別の作例を含む詳しい内容はJR東日本の駅名標再現 (ひらがな主体篇)を見よ。


4. 漢字主体のプロトタイプ


 “サインシステム確立への試金石”

新宿駅15番線〈山手線〉 (東京都新宿区新宿)(旧11→旧13番線)
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 JR東日本のサインシステム構築過程の試行として1988(昭和63)年に新宿駅と秋葉原駅に設置された。外見上の特徴として、駅名標の中央に膨らみをもたせている構造をとっている。このことは設計者が「安心感の得られる表情につくりあげた」と書いている。また旅客が仰ぎ見ることを考慮して、筐体がやや下の方を向いているのも特徴的。表示内容は現在のものとあまり変わらないようだが、細かい所を見ていくと、前駅名が黒字で標記されている点や、両隣駅のローマ字表記が当駅のそれと同じく太字で表されているなどの違いが見られる。なお代々木駅の「々(踊り字)」はゴナのベースにした書体では無く全く別の書体のようだ。(再現画像では独自に作字した)。
 新宿駅のものは長く第一線で活躍を続けていたが、ナンバリング導入に伴う筐体の更新で2016年9月27日に全ての駅名標がその役目を終えた。

◆個別の作例を含む詳しい内容はJR東日本の駅名標再現(漢字主体のプロトタイプ篇)を見よ。


5. 初期漢字主体時代


 “JR東日本のスタンダード確立”

東京駅5番線〈山手線〉 (東京都千代田区丸の内)
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 先の試作品を受け、東北・上越新幹線が東京駅まで延伸した1991年から採用された形式。以後このタイプがJR東日本のスタンダードとなり爆発的に普及する。書体はゴナのベースにした書体とHelvetica。現行のデザインとの違いとして、隣駅名が2文字の場合、文字間にスペースを設けない特徴がある。また「四ツ谷」の「ツ」や「千駄ケ谷」の「ケ」を小さく書く傾向も見られる(ッやヶ)。

◆個別の作例を含む詳しい内容は
【第1部】JR東日本の駅名標再現(漢字主体・直線篇)
【第2部】JR東日本の駅名標再現(漢字主体・分岐篇)
【第3部】JR東日本の駅名標再現(漢字主体・特殊篇)
【第4部】JR東日本の駅名標再現(漢字主体・オリジナルデザイン篇)を見よ。

6. 後期漢字主体時代


 “編集が容易なデジタルフォントへの移行”

目白駅1番線〈山手線〉 (東京都豊島区目白)
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 2000年あたりから編集が容易なデジタルフォントである新ゴとJRHelveticaに変更されたタイプが登場する。また、原則隣駅が二文字の場合は文字間にスペースを開けるようになった。2009年1月の目白駅(山手線)と市ケ谷駅(中央・総武線(各駅停車))を皮切りに光源にLEDを使用した薄型駅名標(SEシリーズ)が普及し始めた。従来に比べて明るさにムラがなく、発色が鮮やかな特長がある。

◆個別の作例を含む詳しい内容は
【第1部】JR東日本の駅名標再現(漢字主体・直線篇)
【第2部】JR東日本の駅名標再現(漢字主体・分岐篇)
【第3部】JR東日本の駅名標再現(漢字主体・特殊篇)
【第4部】JR東日本の駅名標再現(漢字主体・オリジナルデザイン篇)を見よ。


7. ナンバリング導入、多言語化


 “日本のJRから世界のJRへ”

池袋駅1番線〈埼京線〉 (東京都豊島区南池袋)
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 2016年4月、JR東日本が駅ナンバリングの導入と、駅名標の多言語化を発表した。駅ナンバリングとは電車特定区間(E電区間)の各路線の停車駅にアルファベット2文字と数字2桁を割り当てるものである。ただしこの方法だと多くの路線が乗り入れる駅には大量のナンバーが付与され煩雑になるため、JR東日本ではこの他に駅名をアルファベット3文字で表現したスリーレターコードも一部の乗換駅に付与している。実は2012年時点では駅ナンバリング導入には莫大なコストが掛かるのと、訪日外国人のニーズがそれほど高くないとして導入には否定的だったが、東京オリンピック・パラリンピック開催決定や、他のJR会社を含む事業者の導入決定に後押しされる形で導入を決定した。
 多言語化は駅名標の駅名表記を従来の日本語・英語表記に加え中国語(簡体字)と韓国語(ハングル)での表記を加えた4カ国語で行うものである。この多言語化はナンバリングが付与されていない駅でも実施されている。
 多言語化に伴う表示の追加はシール貼付などによる簡易的なものではなく、最新のデザインへの描き直しを伴う前面パネルの交換、または駅名標自体をLEDの最新型のものに更新することで行っているため、首都圏において以前の形式による駅名標は激減することが予想される。

◆ナンバリング圏内の駅名標についてはJR東日本の駅ナンバリング導入と駅名標を見よ。

◆ナンバリング圏外で多言語化された駅名標についてはJR東日本 ナンバリング圏外の多言語駅名標を見よ。


参考文献・サイト


※駅名標に限らずサイン全般の参考文献を掲載しています。
◆赤瀬達三『駅をデザインする』筑摩書房, 2015年
◆赤瀬達三『サインシステム計画学 -公共空間と記号の体系』鹿島出版会, 2013年
◆『年鑑日本のディスプレイ・商環境デザイン'90』六曜社, 1989年
◆『日本のトレードマークとロゴタイプ』グラフィック社, 1973年
◆中西あきこ『されど鉄道文字』鉄道ジャーナル社, 2016年
◆タイプバンク編『The Typebank―現代日本のタイプフェイス』朗文堂書館, 1985年
◆『鉄道ジャーナル』鉄道ジャーナル社(成美堂出版)
・1990年3月号
・1988年3月号
◆JR東日本のプレスリリース
首都圏エリアへ「駅ナンバリング」を導入します ~2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据え、よりわかりやすくご利用いただける駅を目指します~[PDF/946KB](2016年4月6日)
「駅ナンバリング」の導入を開始します[PDF/406KB](2016年8月4日)
◆JR東日本『JR EAST Technical Review』
・No.04 - Summer 2003より特集論文-7「案内サインのアクセシビリティ」[PDF/76KB]
・No.41 - Autumn 2012より特集論文-11「外国人のお客さまに対する適切な案内手法に関する研究」[PDF/1.71MB]
◆株式会社GKグラフィックス
「JR東日本」駅案内サイン標準デザイン
◆株式会社ジェイアール東日本建築設計事務所
コラム - 「駅の案内サイン」
株式会社新陽社
表示灯株式会社
株式会社エムエスアート
公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団

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新規立項:2016年8月27日
最終更新:2017年9月23日 記事追加に伴う変更
お気づきの点がありましたらお気軽にコメントをお寄せ下さい。https://artificium

テーマ : 鉄道
ジャンル : 趣味・実用

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No title

仙台や成田空港など、ナンバリング非付番地域でも4ヶ国語化されていることの補足があってもいいかと。

Re: No title

コメントありがとうございます。

ご指摘の通り、駅名標の4カ国語化がナンバリング付与駅に対してのみ施行されているような書き方になっていたため、一部書き改めました。具体的な駅名を詳述は、概説が長文化するのを避けるために「JR東日本の駅ナンバリング導入と駅名標」(http://artificium.blog.fc2.com/blog-entry-142.html)の方に譲りました。

これからも藝術書庫をよろしくお願いいたします。

藝術書庫 管理者

夢中で読みました

とても内容の濃い、素晴らしい記事ですね。
再現されたサインの画像もとても美しく、眺めているだけで楽しかったです。

今後の更新も楽しみにしています。

Re: 夢中で読みました

えいた様

ご覧いただきありがとうございます。
えいた様のサイトを拝見いたしました。サインシステムの分析をなさっている方からお褒めいただけるとは、これほど嬉しい事はありません。

付け焼き刃の知識で恥ずかしいですが、これからも様々な事業者も含めて更新して参りますので宜しくお願い致します。

藝術書庫 管理者

No title

>2000年あたりから編集が容易なデジタルフォントである新ゴとJRHelveticaに変更されたタイプが登場する
「JRHelvetica」は誤植でしょうか? それともJR東仕様のフォントが存在するんでしょうか。

Re: No title

いつも藝術書庫を御覧いただきありがとうございます。

JRHelveticaについては以下のように回答しますが、それは全て管理者個人の推測です。他にこの事に言及しているサイトや文献が無いので確定情報ではありませんのでご了承下さい。

「JRHelvetica」はJR東日本がHelveticaをベースに制作したであろうオリジナルフォントです。
一般公開されておらず、内部で制作された文書や駅名標でのみ使用されているようです。

Helveticaとの違いは、駅名や線名表記に必要な特殊文字を一般的な記号に置き換えて割り当てている点と、そのデザインです。
!に割当「ū」… 通常Helveticaに収録されている文字よりもマクロンの位置が低く、かつ長くなっている。
#に割当「ō」… 同上
$に割当「Ō」… 同上
%に割当「・(中黒)」…Chuo「・」Sobu Line (Local)などで使用。丸の大きさや両端のスペースが最適化されている。

偶然発見して、JRHelveticaのマクロン付きの文字を駅名標のそれと重ね合わせてみたら丁度一致したため、拙ブログでは後期漢字主体時代の駅名標や番線標などで使用されている欧文フォントは「JRHelvetica」であると記載しています。

参考資料
JR東日本のサイト(英語版)で公開されている旅行者向け路線図
ttp://www.jreast.co.jp/e/downloads/pdf/routemap_e.pdf
PDFのプロパティから使用されているフォントを見てみると「JRHelvetica-Regular」と「JRHelvetica-Bold」が確認できる。

2017年8月8日
藝術書庫 管理者
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カエサル

Author:カエサル
文化の雑食系。歴史・美術・音楽に特に興味有り。

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